Cコース 2020年度

Cコース 2020年度講義プログラム

C-1 職域架橋連携コース
講義一覧
テーマ内容 予定講師
5/23(土)
講義内容
午前 TICPOC概要説明 TICPOC事務局
笠井清登
濱田純子

心理臨床実践と研究の倫理
日本大学文理学部心理学科
津川律子 教授
午後
多職種協働における多元主義
京都大学大学院医学系研究科
村井俊哉 教授
5/24(日)
講義内容
午前
身体疾患患者の心理支援
東京大学医学部附属病院
市橋香代 特任講師
午後 2つの視点で考える統合失調症を持つ方の支援
うつ病
薬理
東京大学大学院医学系研究科
森田健太郎 助教
里村嘉弘 講師
神出誠一郎 准教授
7/11(土)
講義内容
午前
精神分析的心理療法の基礎
帝京大学心理臨床センター
笠井さつき 教授
午後
精神分析を生きる
上智大学総合人間科学部心理学科
藤山直樹 名誉教授
7/12(日)
講義内容
午前
力動的視点を非精神分析的ケア場面に適用する
神戸女学院大学
人間科学部心理・行動科学科
若佐美奈子 准教授
午後
チーム支援を有効にする精神力動的視点
京都大学
松木邦裕 名誉教授
9/5(土)
講義内容
午前
研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論
東京大学医学部附属病院
金原明子 特任助教
国立精神・神経医療研究センター
山口創生 室長
午後
質的研究入門ーデータ分析のはじめの一歩
東京大学大学院教育学研究科
能智正博 教授
9/6(日)
講義内容
午前
総合病院精神医学、多職種協働
東京大学医学部附属病院
近藤伸介 特任講師
午後 当事者研究の歴史と理念 東京大学先端科学技術研究センター
熊谷晋一郎 准教授
ワークシートを使った当事者研究の体験 ダルク女性ハウス
上岡陽江 代表
自他の身体に関する知識と社会変革:
当事者研究とソーシャルマジョリティ
東京大学先端科学技術研究センター
綾屋紗月 特任講師
11/14(土)
講義内容
午前
知能検査や認知機能検査によるアセスメント
上智大学総合人間科学部心理学科
松田修 教授
午後
見えない心を可視化する
― 心理アセスメントによるケース理解 ―
中村心理療法研究室
中村紀子
国際ロールシャッハ学会会長 臨床心理士
11/15(日)
講義内容
午前
認知行動療法
上智大学総合人間科学部心理学科
毛利伊吹 准教授
午後 スキーマ療法入門 洗足ストレスコーピング・サポートオフィス
伊藤絵美 所長
1/16(土)
講義内容
午前
発達障害の臨床
東京大学大学院医学系研究科
金生由紀子 准教授
午後
発達障害アセスメント
帝京大学 文学部 心理学科
黒田美保 教授
1/17(日)
講義内容
午前
慢性疼痛患者の心理支援
名古屋市立大学大学院医学研究科
精神・認知・行動医学
名古屋市立大学病院いたみセンター
酒井美枝 臨床心理士
午後
コラージュ療法の理論と実際
鹿児島大学大学院臨床心理学研究科
中原睦美 教授
2/20(土)
講義内容
午前 地域と共に生きる寺院と「集いの場」 大正大学社会共生学部
髙瀨顕功 専任講師
午後 薬物依存症をもつ人を地域で支える 国立精神・神経医療研究センター
松本俊彦 部長
2/21(日)
講義内容
午前 臨床心理学の社会論的転回 十文字学園女子大学人間生活学部
人間発達心理学科  東畑開人 准教授
午後 ヤングケアラー 成蹊大学文学部現代社会学科
澁谷智子 教授
対人支援における学校現場の課題 寒川町立寒川小学校 総括教諭
森脇誠潔 先生
  • 講師、講義タイトル、内容等は変更となる可能性がございます。
  • 9月と2月はC-1・C-2合同講義となります。
C-2 地域連携コース
講義一覧
テーマ内容 予定講師
4/18(土)
講義内容
午前 TICPOC概要説明 TICPOC事務局
笠井清登
熊倉陽介
午後 当事者研究と専門知-精神保健サービスの共同創造の方法論を目指して- 東京大学先端科学技術研究センター
熊谷晋一郎 准教授
4/19(日)
講義内容
午前 22q11.2欠失症候群-重複する障害を抱えた子どもとその家族の生活- 22 HEART CLUB
三ツ井幸子 副代表
家族が望む精神科医療と地域社会 あおば福祉会
島本禎子 理事長
午後 中動態の世界――意志と責任の考古学 東京大学総合文化研究科・教養学部
國分功一郎 准教授
6/6(土)
講義内容
午前 TICPOC演習
午後 プライマリ・ケアと精神科医療を統合した訪問診療 祐ホームクリニック吾妻橋
夏堀龍暢 院長
6/7(日)
講義内容
午前 地域共生社会におけるメンタルヘルスの戦略 川崎市精神保健福祉センター
全国精神保健福祉連絡協議会会長
竹島正 所長
午後 東日本大震災におけるメンタルヘルス 岩手医科大学神経精神科学講座
大塚耕太郎 教授
9/5(土)
講義内容
午前 研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論 東京大学医学部附属病院
金原明子 特任助教
国立精神・神経医療研究センター
山口創生 室長
午後 質的研究入門ーデータ分析のはじめの一歩 東京大学大学院教育学研究科
能智正博 教授
9/6(日)
講義内容
午前 総合病院精神医学、多職種協働 東京大学医学部附属病院
近藤伸介 特任講師
午後 当事者研究の歴史と理念 東京大学先端科学技術研究センター
熊谷晋一郎 准教授
ワークシートを使った当事者研究の体験 ダルク女性ハウス
上岡陽江 代表
自他の身体に関する知識と社会変革:
当事者研究とソーシャルマジョリティ
東京大学先端科学技術研究センター
綾屋紗月 特任講師
10/17(土)
講義内容
午前 TICPOC演習
午後 リカバリー・ピアサポートと
ピアサポートワーカー
東京大学大学院医学系研究科
宮本有紀 准教授
東京大学医学部附属病院
佐々木理恵 学術支援専門職員
10/18(日)
講義内容
午前 トラウマインフォームドケア 兵庫県こころのケアセンター
亀岡智美 副センター長兼研究部長
午後 対人支援サービスの質の評価とPDCAサイクル 東京大学大学院工学研究科
水流聡子 特任教授
12/19(土)
講義内容
午前 TICPOC演習
午後 家父長制と資本制とケア 認定NPO法人ウィメンズ アクション
ネットワーク
上野千鶴子 理事長
12/20(日)
講義内容
午前 学校メンタルヘルスと若者の自殺対策 NPO法人LightRing.
石井綾華 代表理事
午後 文京区の虐待対策と子ども家庭支援 文京子ども家庭部子ども家庭支援センター
職員
事故・事件の被害者支援 被害者支援都民センター
鶴田信子 心理相談担当責任者
2/20(土)
講義内容
午前 地域と共に生きる寺院と「集いの場」 大正大学社会共生学部
髙瀨顕功 専任講師
午後 薬物依存症をもつ人を地域で支える 国立精神・神経医療研究センター
松本俊彦 部長
2/21(日)
講義内容
午前 臨床心理学の社会論的転回 十文字学園女子大学人間生活学部
人間発達心理学科  東畑開人 准教授
午後 ヤングケアラー 成蹊大学文学部現代社会学科
澁谷智子 教授
対人支援における学校現場の課題 寒川町立寒川小学校 総括教諭
森脇誠潔 先生
  • 講師、講義タイトル、内容等は変更となる可能性がございます。
  • 9月と2月はC-1・C-2合同講義となります。

C-1コース講義内容

5月

  1. 笠井清登・濱田純子5月23日(土)AM

    TICPOC概要説明
    本プログラムの中心コンセプトである価値にもとづくケア、およびTICPOCの三要素であるトラウマインフォームドケア、コプロダクション、組織変革について概説し、これからの各講義を理解するための基本的な概念デバイスを示します。
  2. 津川律子先生5月23日(土)AM

    心理臨床実践と研究の倫理
    心理臨床など対人支援における実践や研究に際して必要となる倫理的配慮について学ぶ。
  3. 村井俊哉先生5月23日(土)PM

    多職種協働における多元主義
    折衷主義としての生物・心理・社会モデルを超えて、方法についての多元主義と価値についての多元主義を学び、多職種協働の現場でどのように適用できるかを考える。またケアにまつわる様々な概念デバイスについて理解を深める。
  4. 市橋香代先生5月24日(日)AM

    身体疾患患者の心理支援
    身体疾患とその治療が患者や家族に与える影響について社会的背景も含めて考える機会となればと思います。
  5. 森田健太郎先生5月24日(日)PM

    2つの視点で考える 統合失調症を持つ方の支援
    統合失調症に関する医学・専門職的知見を深めると共に、統合失調症を持つ方から体験や回復の実際を学ぶ。
  6. 里村嘉弘先生5月24日(日)PM

    うつ病
    精神医学の視点から、「うつ病」の基礎的事項について学ぶ
  7. 神出誠一郎先生5月24日(日)PM

    薬理
    精神科診療で行われる薬物療法について、代表的な向精神薬の薬理作用や処方の実際を解説する。

7月

  1. 笠井さつき先生7月11日(土)AM

    精神分析的心理療法の基礎
    転移・逆転移、投影など、クライアントとセラピストの間に生じる関係とその取扱いについて、事例を交えて概説する。
  2. 藤山直樹先生7月11日(土)PM

    精神分析を生きる
    精神分析を業として行うことを超えて、精神分析を生きる臨床家の語りを聴きます。
  3. 若佐美奈子先生7月12日(日)AM

    力動的視点を非精神分析的ケア場面に適用する
    一般的なケア場面に力動的視点を導入し、ケース理解とケアを立体的に深める方法について学ぶ。具体的な事例を用いて、力動的アセスメントと介入の在り方について、実際的に学ぶ。
  4. 松木邦裕先生7月12日(土)PM

    チーム支援を有効にする精神力動的視点
    こころに関わるチーム支援では精神力動的視点が必要かつ有効であることを、理論モデルのみでなく、実際の臨床場面から学ぶ。

9月

(C-1,C-2合同)

  1. 金原明子先生9月5日(土)AM

    研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論
    「研究成果の普及・実装」に関する科学(Dissemination & Implementation science)を紹介しながら、エビデンスに基づく支援が広く普及・実施されていない状況に対し、実施のための促進要因・阻害要因・対策を考えていきます。
  2. 山口創生先生9月5日(土)AM

    研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論
    共同意思決定(Shared decision making)やIPS(Individual placement and support)などの重要なテーマを題材とし、精神保健サービスを改善していくための研究の方法論や考え方に関する講演を行う。
  3. 能智正博先生9月5日(土)PM

    質的研究入門-データ分析のはじめの一歩
    私たちの周りは“語り”に満ちており、語られた言葉を通じて人間を理解しようとする試みは、フロイトをはじめこれまで数多くなされてきた。近年盛んになってきた質的研究は、“語り”をどのように扱おうとしているのか。聴く場所や対象によって様々に異なる“語り”の、どこを取り上げどのようにデータ化するか。より深く対象を理解するには何が必要か。実例を通して質的研究の意義や方法論について理解する。
  4. 近藤伸介先生9月6日(日)AM

    総合病院精神医学、多職種協働
    外因、内因、心因の階層性、発達障害スペクトラム概念の功罪、ロールシャッハテストに医師が期待するもの、など、当院病棟前医長として、当院で働く心理職を指導している経験から、心理職に求められる素養について概説し、再考を深める。
  5. 熊谷晋一郎先生9月6日(日)PM

    当事者研究の歴史と理念
    当事者研究に影響を与えた当事者活動の系譜、先行する当事者活動のどのような部分が受け継がれて当事者研究が誕生したかについての「歴史」、当事者研究を実践しているグループで大切にされている「理念や態度」について概説する。
  6. 綾屋紗月先生9月6日(日)PM

    自他の身体に関する知識と社会変革:当事者研究とソーシャルマジョリティ
    既存の自閉スペクトラム症の概念は、障害の社会モデルを踏まえていない。発達障害者を中心とした当事者研究会の中で蓄積された多くのナラティブを元に、「定型発達者のここが不思議」という内容をピックアップし、多分野の研究者とコラボレーションする中で行われた「ソーシャル・マジョリティ研究」について概説する。
  7. 上岡陽江先生9月6日(日)PM

    ワークシートを使った当事者研究の体験
    当事者研究という営みについて体験的に理解するための演習を行う。当事者研究ワークシートを用いて、2人一組でお互いに交代で聴き取り合い、当事者研究を体験する。4人一組程度のグループ内で互いのワークシートを回覧し、仲間のコメントを書く。

11月

  1. 松田修先生11月14日(土)AM

    知能検査や認知機能検査によるアセスメント
    Wechsler知能検査(例、WISC-Ⅳ、WAIS-Ⅳ)や、認知症や軽度認知障害に対する認知機能検査の実際・解釈・活用の要点を解説する。
  2. 中村紀子先生11月14日(土)PM

    見えない心を可視化する-心理アセスメントによるケース理解-
    目に見えない心の構造を外在化して「見える」ものにすると、自分を客観的に理解する稀有な経験となる。
  3. 毛利伊吹先生11月15日(日)AM

    認知行動療法
    認知行動療法は、現実的な問題に関わりつつ心を支える援助方法である。ここではその実際について理解を深める。
  4. 伊藤絵美先生11月15日(日)PM

    スキーマ療法入門
    スキーマ療法とは、米国の心理学者Jeffrey Youngが提唱する、認知行動療法を中心とした統合的な心理療法であり、当初は境界性パーソナリティ障害を対象としたが、最近では、広く「生きづらさ」に焦点を当て、その生きづらさを理解し、そこから自分を解放していくための手法として世界的に注目されている。本講義ではスキーマ療法の理論と方法の基礎を紹介する。

1月

  1. 金生由紀子先生1月16日(土)AM

    発達障害の臨床
    自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症を含めて多様な発達障害について概説して、よりよい理解と対応を目指す。
  2. 黒田美保先生1月16日(土)PM

    発達障害のアセスメント
    発達障害の特性を調べるためには、多くのアセスメント・ツールがあります。それらを解説し、実際に各患者さんをどのように評価するかを考えます。また、支援においては、発達障害の特性だけでなく併存しやすい他の精神疾患や適応行動などの調べる必要があります。こうした包括的なアセスメントについても学びます。
  3. 酒井美枝先生1月17日(日)AM

    慢性疼痛患者の心理支援
    慢性疼痛患者の心理支援について、主にアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に着目して、その実際と効果について概説する。
  4. 中原睦美先生1月17日(日)PM

    コラージュ療法の理論と実際
    表現療法におけるコラージュ療法の特徴や歴史、留意点等について講義し、各自コラージュ制作を体験する。

2月

(C-1,C-2合同)

  1. 髙瀨顕功先生2月20日(土)AM

    地域と共に生きる寺院と「集いの場」
    地域における寺院・宗教組織の役割や、高齢者ケアにおける仏教的資源の導入可能性など、宗教の社会参加・社会貢献活動について概説する。
  2. 松本俊彦先生2月20日(土)PM

    薬物依存症をもつ人を地域で支える
    刑の一部執行猶予制度下で刑務所内処遇から社会内処遇へと施策の転換が行われつつあり、社会の中に増えつつある薬物依存症をもつ人の地域生活を支えるための支援について、基本的な考え方を身につけるための講演を行う。トラウマを背景とし、苦痛を和らげるための自己療養としての物質依存をもつ人に対して、厳罰主義的な対応は無効であるばかりかトラウマ体験を重ねて回復を妨げるということを認識する。その上で、SMARPPやVoice Bridges(声の架け橋) Projectなど、全国的にひろがりつつある薬物依存症地域支援のための具体的な取り組みについて、その理念と実践のための方法論を学ぶことを通して、トラウマとアディクションの統合的な支援の考え方に基づいた、具体的な臨床実践を展開できるための素養を身につける。
  3. 東畑開人先生2月21日(日)AM

    臨床心理学の社会論的転回
    臨床心理学には本来、心理モデルと社会モデルの両方の視点があったはずだが、心理士が専門職化していく過程で、心理モデルが大きな影響力を持つようになった。しかし、公認心理師が成立し、公共財源がシュリンクしていく中で、臨床心理学は再び社会モデルに取り組まねばならないと、私は考えている。そのとき、第1に取り組まれるべきは、心理的援助そのものを社会論の立場から捉え直すことである。すなわち、心理モデル自体が社会論から見ると一体なんであるのか、そういう問いに取り組んでみたい。それは次の時代にあって、臨床心理学が生き残るために必ず取り組まねばならない課題と考えている。
  4. 澁谷智子先生2月21日(日)PM

    ヤングケアラー
    ヤングケアラーとは、家族のケアを担う一八歳未満の子どもを指す。超高齢社会を迎え、介護を担う若い層も増えており、精神疾患等を抱える家族に対応している子どもや若者も少なくない。その影響は彼らの学業や日常生活にも及んでいる。ヤングケアラーの現状について、調査データ、当事者の声、海外の事例、現在の取り組みを紹介しながら概説し、現代社会の中で今まで見過ごされてきたヤングケアラーの存在と彼らが直面する問題をとらえると共に、それを通して、「ケア」のあり方について再考する。
  5. 森脇誠潔先生2月21日(日)PM

    対人支援における学校現場の課題
    ヤングケアラーなどの概念と児童生徒・教員の認知・実感の乖離、児童生徒・教員が概念を知ることの意味について具体的な例を通して理解を深めます。ヤングケアラーのような社会的課題を抱えている児童生徒について、学校現場で、気づき、声掛けをし、SCやSSWにつないでいくことの必要性と在り様について実践的な学びを深めます。

C-2コース講義内容

4月

  1. 笠井清登・熊倉陽介4月18日(土)AM

    TICPOC概要説明
    TICPOC(Trauma Informed care, Co-production, Organizational Change)やValues-Informed Practiceなど、本コースを通底する基本的概念について触れながらコースの概説を行う。
  2. 熊谷晋一郎先生4月18日(土)PM

    当事者研究と専門知:精神保健サービスの共同創造の方法論を目指して
    講義の前半では、脳性まひという障害をもって生まれた一当事者の立場から、健常者に近づけることだけを目指す医療や支援によって刻み込まれた傷や官能について述べるとともに、その後、先輩障害者が切り拓いてくれた思想と実践によって生き延びることができた経験を紹介する。講義の後半では、医療者として仕事をし、また自ら慢性の体の痛みを経験する中で、先輩障害者の思想と実践が取りこぼしてきた問題(痛みや精神障害など、「見えにくい困難」という問題系と、自己コントロールの思想が孤立や依存症に近接してしまうという問題系)に直面し、当事者研究、そして、当事者の経験知と専門知との共同創造の重要性に気づいていった過程を説明する。最後に、実際に共同創造を進めていく際の難しさと、留意点を簡潔にまとめる。
  3. 三ツ井幸子先生4月19日(日)AM

    22q11.2欠失症候群ー重複する障害を抱えた子どもとその家族の生活ー
    22q11.2欠失症候群という、身体障害・知的障害・精神障害が併存しやすい染色体起因疾患をもつ子ども達と、それを支える親の体験する複合的な困難に関して、家族の立場から講演をおこなう。重複する障害をもつ人達を前に、医療・福祉・教育の仕組みをどのように変えていく必要があり、支援者にはどのような役割が求められるのか、家族会の立場で活動する講師と一緒に考える機会をもつ。
  4. 島本禎子先生4月19日(日)AM

    家族が望む精神科医療と地域社会
    精神疾患をもつ人の家族の立場から、家族として、人として考えた「支援の原点」について触れ、どのような精神保健医療福祉のあり方が患者や家族に求められているか共に考える。
  5. 國分功一郎先生4月19日(日)PM

    中動態の世界――意志と責任の考古学
    哲学研究の世界では、自発性、主体性、言い換えれば“意志"の存在が疑われている。依存症をもつ人を、「意志が弱い」と認識するなど、“近代的意志"の存在を前提とした“常識"が人間に害を及ぼしている可能性について考え、ケアのあり方を再考する。

6月

  1. 夏堀龍暢先生6月6日(土)PM

    プライマリ・ケアと精神科医療を統合した訪問診療
    訪問診療の現場経験を通してみえてくる対人援助における基本的な課題について整理し、プライマリ・ケアと精神保健医療福祉の連動の重要性や、必要とされる地域連携について概観する。
  2. 竹島正先生6月7日(日)AM

    地域共生社会におけるメンタルヘルスの戦略
    地域のストレングスを活かし、コミュニティの抱えるトラウマからの回復に向けた地域レベルでの精神保健サービスの実践のための理念や方法論、援助希求の多様性に対応した支援のあり方などについて学ぶ。自治体における支援サービスの質を継続的に向上させるための研究と実践の方法論についても、具体的なプロジェクトを元に紹介する。
  3. 大塚耕太郎先生6月7日(土)PM

    東日本大震災におけるメンタルヘルス
    岩手県での経験を元に、東日本大震災後のコミュニティメンタルヘルスの取り組みについての講演を行う。震災直後の安全確保のためのマネジメントから、中長期的な復興過程の中でそれぞれの被災地域ごとに生じてくる課題をアセスメントし、必要な支援構造を構築するための実践知を具体的な経験から学ぶ。震災以前から岩手県で取り組まれていた自殺対策の枠組み、東日本大震災以降に構築した「重層的な支援構造」の意義について整理する。被災者や震災を経験したコミュニティが回復していくプロセスと、そこで求められる支援者の素養を理解し身につけることを目的とする。

9月

(C-1,C-2合同)

  1. 金原明子先生9月5日(土)AM

    研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論
    「研究成果の普及・実装」に関する科学(Dissemination & Implementation science)を紹介しながら、エビデンスに基づく支援が広く普及・実施されていない状況に対し、実施のための促進要因・阻害要因・対策を考えていきます。
  2. 山口創生先生9月5日(土)AM

    研究成果の普及と実装の科学、精神保健研究の方法論
    共同意思決定(Shared decision making)やIPS(Individual placement and support)などの重要なテーマを題材とし、精神保健サービスを改善していくための研究の方法論や考え方に関する講演を行う。
  3. 能智正博先生9月5日(土)PM

    質的研究入門-データ分析のはじめの一歩
    私たちの周りは“語り”に満ちており、語られた言葉を通じて人間を理解しようとする試みは、フロイトをはじめこれまで数多くなされてきた。近年盛んになってきた質的研究は、“語り”をどのように扱おうとしているのか。聴く場所や対象によって様々に異なる“語り”の、どこを取り上げどのようにデータ化するか。より深く対象を理解するには何が必要か。実例を通して質的研究の意義や方法論について理解する。
  4. 近藤伸介先生9月6日(日)AM

    総合病院精神医学、多職種協働
    外因、内因、心因の階層性、発達障害スペクトラム概念の功罪、ロールシャッハテストに医師が期待するもの、など、当院病棟前医長として、当院で働く心理職を指導している経験から、心理職に求められる素養について概説し、再考を深める。
  5. 熊谷晋一郎先生9月6日(日)PM

    当事者研究の歴史と理念
    当事者研究に影響を与えた当事者活動の系譜、先行する当事者活動のどのような部分が受け継がれて当事者研究が誕生したかについての「歴史」、当事者研究を実践しているグループで大切にされている「理念や態度」について概説する。
  6. 綾屋紗月先生9月6日(日)PM

    自他の身体に関する知識と社会変革:当事者研究とソーシャルマジョリティ
    既存の自閉スペクトラム症の概念は、障害の社会モデルを踏まえていない。発達障害者を中心とした当事者研究会の中で蓄積された多くのナラティブを元に、「定型発達者のここが不思議」という内容をピックアップし、多分野の研究者とコラボレーションする中で行われた「ソーシャル・マジョリティ研究」について概説する。
  7. 上岡陽江先生9月6日(日)PM

    ワークシートを使った当事者研究の体験
    当事者研究という営みについて体験的に理解するための演習を行う。当事者研究ワークシートを用いて、2人一組でお互いに交代で聴き取り合い、当事者研究を体験する。4人一組程度のグループ内で互いのワークシートを回覧し、仲間のコメントを書く。

10月

  1. 宮本有紀先生 佐々木理恵先生10月17日(土)PM

    リカバリー・ピアサポートとピアサポートワーカー
    TICPOC Dコース(ピアサポートワーカーの育成)との連携の元、ピアサポートワーカーの育成、雇用、現場における協働について学び、組織変革(Organizational Change)を通したリカバリーの実践をするための具体的な方法について学ぶ。
  2. 亀岡智美先生10月18日(日)AM

    トラウマインフォームドケア
    トラウマインフォームドケアの歴史について概観すると共に、その基本的な考え方について概説する。特に虐待対策や子ども家庭支援の領域において、どのようにトラウマインフォームドケアの実践が可能か、具体的な実例を通して理解を深める。
  3. 水流聡子先生10月18日(日)PM

    対人支援サービスの質の評価とPDCAサイクル
    対人支援サービスの質の評価とPDCAサイクルに関する講演を行う。自らの個別支援のプロセスや組織としての業務プロセスについて分析し、支援の質の評価や改善を行うための方法論を、具体的なプロジェクトの紹介を通して学ぶことを目的とする。この講義を通して、自らの支援について振り返り、学習するという基本的素養を身につける。当事者と専門職による共同創造(Co-production)を通した対人支援の構造変革(Organizational Change)をおこなっていく上で重要となる、支援の構造化・可視化のための基本的な考え方を身につける。

12月

  1. 上野千鶴子先生12月19日(土)PM

    家父長制と資本制とケア
    フェミニズムと女性学の系譜をケアという視点を持ちながら振り返ることを通して、精神疾患をもつ当事者と専門職の共同創造の実現に向けた社会学的思考を身につける。
  2. 石井綾華先生12月20日(日)AM

    学校メンタルヘルスと若者の自殺対策
    講師が代表理事を務めるNPO法人が行う若者の自殺対策「若者自身が身近な相談者になるユースゲートキーパー養成講座」の実践を通して、ピアサポートを生かした若者自殺対策をどのように学校をはじめとしたコミュニティの中で普及させていくことができるかという方法論に関する講演を行う。生きづらさを援助することと援助されることの対称性と非対称性について理解し、友人や恋人など「身近で支える人」を支えるというアイディアに基づいて、具体的な臨床実践の現場で支援が届きにくい人に有効な支援を届けるための方策を身に付けることを目的とする。
  3. 文京子ども家庭部子ども家庭支援センター 職員12月20日(日)PM

    文京区の虐待対策と子ども家庭支援
    文京区の地域特性をふまえながら、要保護児童対策地域協議会をはじめとした子ども家庭支援や虐待対策の枠組みについて概観し、それらの領域と精神保健の連動の重要性について整理する。東京大学医学部附属病院も文京区に立地していることから、虐待対策と精神科医療の連動について、今後の発展の可能性を具体的に構想することを通して実践的な学びを深める。
  4. 鶴田信子先生12月20日(日)PM

    事故・事件の被害者支援
    事故や事件の被害者の特徴や特有の問題について理解し、その支援のあり方について考える。トラウマに配慮したケアのあり方や、背景となる法制度などの支援の枠組みについて概説を行う。架空事例についてのワークを通して、事故や事件の被害者に対する包括的な支援体制を構築するための考え方を学ぶ。また、トラウマを抱えた人に対する心理教育のロールプレイを通して、トラウマインフォームドケアについての理解を深める。

2月

(C-1,C-2合同)

  1. 髙瀨顕功先生2月20日(土)AM

    地域と共に生きる寺院と「集いの場」
    地域における寺院・宗教組織の役割や、高齢者ケアにおける仏教的資源の導入可能性など、宗教の社会参加・社会貢献活動について概説する。
  2. 松本俊彦先生2月20日(土)PM

    薬物依存症をもつ人を地域で支える
    刑の一部執行猶予制度下で刑務所内処遇から社会内処遇へと施策の転換が行われつつあり、社会の中に増えつつある薬物依存症をもつ人の地域生活を支えるための支援について、基本的な考え方を身につけるための講演を行う。トラウマを背景とし、苦痛を和らげるための自己療養としての物質依存をもつ人に対して、厳罰主義的な対応は無効であるばかりかトラウマ体験を重ねて回復を妨げるということを認識する。その上で、SMARPPやVoice Bridges(声の架け橋) Projectなど、全国的にひろがりつつある薬物依存症地域支援のための具体的な取り組みについて、その理念と実践のための方法論を学ぶことを通して、トラウマとアディクションの統合的な支援の考え方に基づいた、具体的な臨床実践を展開できるための素養を身につける。
  3. 東畑開人先生2月21日(日)AM

    臨床心理学の社会論的転回
    臨床心理学には本来、心理モデルと社会モデルの両方の視点があったはずだが、心理士が専門職化していく過程で、心理モデルが大きな影響力を持つようになった。しかし、公認心理師が成立し、公共財源がシュリンクしていく中で、臨床心理学は再び社会モデルに取り組まねばならないと、私は考えている。そのとき、第1に取り組まれるべきは、心理的援助そのものを社会論の立場から捉え直すことである。すなわち、心理モデル自体が社会論から見ると一体なんであるのか、そういう問いに取り組んでみたい。それは次の時代にあって、臨床心理学が生き残るために必ず取り組まねばならない課題と考えている。
  4. 澁谷智子先生2月21日(日)PM

    ヤングケアラー
    ヤングケアラーとは、家族のケアを担う一八歳未満の子どもを指す。超高齢社会を迎え、介護を担う若い層も増えており、精神疾患等を抱える家族に対応している子どもや若者も少なくない。その影響は彼らの学業や日常生活にも及んでいる。ヤングケアラーの現状について、調査データ、当事者の声、海外の事例、現在の取り組みを紹介しながら概説し、現代社会の中で今まで見過ごされてきたヤングケアラーの存在と彼らが直面する問題をとらえると共に、それを通して、「ケア」のあり方について再考する。
  5. 森脇誠潔先生2月21日(日)PM

    対人支援における学校現場の課題
    ヤングケアラーなどの概念と児童生徒・教員の認知・実感の乖離、児童生徒・教員が概念を知ることの意味について具体的な例を通して理解を深めます。ヤングケアラーのような社会的課題を抱えている児童生徒について、学校現場で、気づき、声掛けをし、SCやSSWにつないでいくことの必要性と在り様について実践的な学びを深めます。

C-2コースではこれらの講演に加えて、チューターを交えた参加者同士のプロジェクト内部ミーティング・演習を、年間を通して行う。コース参加者がそれぞれの立場で対峙している課題に対して、講師や参加者との対話や学びを通して向き合い、自らの臨床実践のブラッシュアップをはかるとともに、現実的かつ具体的なプロジェクトを実際に立ち上げることを通した実践的な学びを得ることも目標とする。